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【時の言葉】外出を控え、資源消費を減らそう(2022.6.20))

【時事評論2020】

ストック経済は有効か?

2020-04-23
  ストック経済を学問的に調べていくと奥が深い。ここでは単純に考えて、システム的に考えた場合の貯蔵系について考えてみたい。経済は動いていないと倒れてしまう自転車に例えられることもある。これをフロー経済と呼ぶ。今それに危機が迫っている。一方止まっても大丈夫なように両脇に補助輪がついた自転車もある。使い勝手は悪いが、安全性は高い。どちらを選択するかは乗る人の年齢・経験・用途によって変わるだろう。
 
  コロナ禍の最中、都市封鎖や外出禁止が取られた。戦時中と同じような厳しい措置である。日本は「要請」に留まっているため、緊迫感はなく、一時買いだめに走ったトイレットペーパーやマスクはスーパーに山積みになっていると聞く。食料品も不足はないようで、消費全体が極端に冷え込んだ。だがストック経済のお陰かこれがまだ3ヶ月程度であるから良いようなものだが、6ヶ月、1年続いた場合のことは予断できない。2021年2月になって既に1年を超えたが、意外に経済も生活もまだ破綻はしていない。
 
  飲食店・商店・デパートなどが次々と倒産した場合、物はあっても販売者が無くなる。現在は流通が維持されているためネット通販が大いに役立っており、アマゾンやメルカリは業績上々だ。だがそれも使えなくなる事態がないとも限らない。その場合、ストックが大いに役立つだろうが、それはどの位有効なのだろうか。問題はストックが使える期間であり、相当大量なストックがないと日常生活に差し支えるだろう。
 
  非常事態には戦争・災害・ウイルス禍による都市封鎖などがある。どの場合でも、①水・②食料・③電気・④ガス・⑤自動車燃料・⑥トイレットペーパーなどの消耗日用品、が不足すると困ることになり、①と②は生命維持に不可欠だ。これらをストックしている人は決して多くない。地方と都会では地方が圧倒的に有利な状況にある。ノムはその中間的な地方都市に住むため、多少は対処できる。
 
  コロナ禍が半年を過ぎた9月、新聞報道で家計貯蓄が19年ぶりの高水準になったとあった。所得のうち貯蓄に回す貯蓄率が8.0%になったそうだ。確かに筆者自身を考えても、小遣いを使わなくなり、車で外出する機会も減ったのでガソリンも1ヵ月以上で1回に減り、貯金が貯まってきている。それだけ社会の経済が回らなくなってきていることを示し、潜在失業者は300万人以上になっているとのこと。経済がおかしくなれば、なおさら家庭内ストックが重要になるだろう。
 
  まず水については井戸を掘るのが賢明だろう。水質云々の問題は後回しで良い。幸いノムはとても良いおいしい水質を得ている。停電時の発電機も購入し、その燃料の24時間分くらい確保している。食料は保存の効くものを買い貯めている。順に消費できる程度であるが5人程度で1ヵ月は持たないだろう。畑があるのは助かる。カセットコンロを2台と燃料ボンベを24時間分常備している。消耗日用品は半年は持つだろう。倉庫があるのは有難い。
 
  それらが役立つかどうかははっきり言って不明である。何事も確率の問題であり、幸と不幸は紙一重である(確率論・状況論運命論)。だが人はリスクに対して保険を掛けるストックは保険であり、それは多少の安心感と満足感を与える。それで十分であろう。欧米の人はストックである貯蓄をしないその日暮らしが好きなようだ。あればあるだけ使ってしまう。そして危機が来るとすぐパニックに陥る。日本人は貯蓄精神に富んでおり、ストック経済を心得ている。コロナ禍で経済的に困窮するようになって、タイの街中ではアパートの屋上で菜園を始めた人が増えたというニュースがあった(21.2.4NHK)。住民の多くが観光客相手の商売をしており、ロックダウンで商売が成り立たなくなった。廃タイヤを鉢代わりに利用している。ストック経済の考え方は、危機が訪れてからでも有効であることを示唆している。
 
  以上をまとめてみよう。ストック経済には以下の利点がある。
 ①パニックに陥らずに済み、社会的な安定を保つ
 ②心の余裕を生み出し、ストレスから解放される
 
  欠点もあり利点だけではない。
 ①周囲からやっかまれることがある。孤立化が避けられない
 ②他の人を助けたい衝動や罪悪感に襲われる
 ③最悪の場合、苦しみの期間が長引くだけのこともある
 
  はたしてあなたはどちらを選択するのだろうか? これは人生における選択(サバイバル選択)の問題である。誰かが言った言葉だが、「人は最善を願い、最悪に備える」。

  追記したい事が起こった。2022年4月24日に勃発したプーチンによるウクライナ侵攻が、キーウ(キエフ)でおよそ1ヵ月、マリウポリで3ヵ月におよぶウクライナ側での籠城をもたらした。何度も水と食料の不足が伝えられ、補給もままならない状況が続いた。だが最後にマリウポリの製鉄所が陥落した際には、人々は戦傷者を別にして、意外に痩せ衰えもせずにシェルターから出てきたようだ。餓死者が出たという報道はない。こうした事態が可能であったのは、シェルターに相当のストックがあったからに違いない。その詳細は伝わってきていないが、医薬品の不足から麻酔薬無しに手足の切断が行われたこともあったという。後世のためにも、その籠城生活での体験記録が残されることが望まれる

  このことから、ストック経済にはその収納場所が重要であることが分かった。特に戦時のことを想定して、地下シェルターや畑の地中での食料保存が有効であることも分かった。ノムはその両方を試しているが、後者の一例を紹介しておきたい。ノムはヤマイモ栽培を行っているが、これは10月半ばから6月半ばまでの8ヵ月間、地中に根茎を保存できることが実験から証明された。以前は発芽する4月初旬までしか食べられないと思っていたが、蔓が3mほどに伸びた6月段階で掘ってみたところ、多少萎びてはいたが、元苗が採れた。これを煮て食べてみたところ、これまでとは全く異なる触感になった。通常はホクホク感のある軟らかい状態になるが、筋っぽくて固いせいか、シャキシャキ感のあるものになった。だが十分に食べられる。身体に悪い影響もないようだ。地中で保存可能なものは他にもジャガイモ・サツマイモなどの根茎類があるだろう。こうした作物をストック栽培すれば、食料高騰時や戦時には大いに役立つと思われる。そして2022年6月現在、日本もコロナ禍・プーチン戦争の余波で食料品が10~20%高騰している。食料自給率の低い日本は、こうしたときにもろに影響を受けるであろう。(20.9.5・21.3.6・22.6.13追記)

 
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