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【時の言葉】外出を控え、資源消費を減らそう(2022.6.20))

【時事評論2020】

動物との共助

2020-11-13
  人間が動物と共助し始めたのは相当古い時期からと思われる。特にイヌは最も古くから人間とともに進化してきた。1万5千年前にオオカミから分化したのち、1万2千年前にはすでに子供の埋葬に飼い犬が伴葬されている。現在ではイヌの種類は定かでないほど多くなり、700とも数千とも言われる。人間が人工的に交配で改良を重ねてきた結果である。たった1万5千年でこれほどまでに進化をしたというのも珍しいだろう。
 
  イヌの種類はその気候に合わせて、用途に合わせて、人間の趣向に合わせて改良されてきた。イギリス王室の愛玩犬として創り出されたキャバリア・キングチャールズ・スパニエルという種は独特の鼻が詰まった愛らしいものだが、一般にキャバリアと呼ばれるものには鼻の長いものもある。そして最近大きな活躍を見せているのが役割に特化して人間に共助をしているイヌたちである。昔からの用途から順に並べると、番犬・牧羊犬・狩猟犬・盲導犬・警察犬・災害救助犬・麻薬探知犬・介護犬(ファシリティードッグ)などがある。介護犬は虐待を受けた子の心の癒しや、老人ホームでの共同ペットとして役立っている。最近ではその鋭敏な臭覚を生かして人間の癌を探知する研究も行われているそうだ。これからはこうしたごく特殊な分野にもイヌの特性が生かされていくだろう。
 
  イヌが同じ家畜のネコよりもはるかに有用なのは、イヌが人間に忠実で、その命令を覚えるとかなり正確に動作するところにある。彼らは自分に与えられた使命を理解しているようであり、死に直面しても勇敢にその使命を果たそうとする。だがそれは訓練次第であり、犬の中には臆病なものもいるし、甘やかされて育ったイヌは「権勢症候群」という我がままで自分が主(ぬし)であると思うようになってしまう。それは人間にも言えることであり、大事に厳しく育てた子は親孝行になり、虐待されて育った子や過保護に育てられた子はトラウマに一生苛まれることになり、時には親や祖父母を殺すこともある。イヌはどんなにいじめられても飼い主を殺すことはないが、攻撃を躾けられたドーベルマンなどの大型犬は幼児を殺すほど凶暴になる。
 
  愛玩用ペットはそこに居るという存在感だけで人の心を癒すが、人間は動物の肉を食するという食物連鎖の頂点にいるため、食肉原料としての動物の飼育も行ってきた。それは現在は牧畜として大規模化が進んでおり、そのために土地が荒廃し、河川が汚染されているという。地球温暖化にとって牧畜がもたらしている影響は予想以上に大きなものであり、肉を食べることに感謝とともに贖罪感を持つべき時代になっている。ブラジルのアマゾンの熱帯雨林を切り開いた大牧場では工業的手法で牛が大規模に牧畜されており、森林伐採により2重の環境破壊に貢献してしまっている。地球の陸地の26%が牧畜に使用されているとも言われる。そしてなおのこと悪いことに、世界の農地の75~80%が牧畜のための飼料生産に使われているという驚くべきデータもある。畜産・農業を含める工業型の食料システム全体が、森林破壊の原因の80%を占めるともいわれている。
 
  つい最近では11月4日のコロナ関連のニュースで、デンマークで変異コロナ感染ミンクを1080ヵ所の牧場で1500~1700万匹を殺処分するというものがあった。これは国内のミンクをすべて殺処分することになるという。勿論ミンクは毛皮用に使われ、食用にされているかどうかは不明だが、デンマークの1つの産業が消滅するかもしれない大事件である。これまでにも牛では狂牛病、鶏では鳥インフルエンザ、豚では豚コレラなどにより大量の動物がホロコーストされているが、これは大量飼育が原因の集団感染(クラスター感染)であり、なんとしてもこの悲劇を起こさないために分散飼育に移行しなければならない。効率だけを優先しようとする競争社会を無くし、共存社会に持っていかなければならない
 
  未来世界では農業や牧畜は分散型、工業は分散的集約型になるであろう。農業・牧畜は自然生態系に絡んでくるため集約化は大きなリスクが伴う。危機に備えて分散化しておけば、どこかに被害があってもそれはその場所だけに限定されるために全体への波及を防ぐことができる。コロナ禍において取られている分散化と同じ原理である。全て自然に関わることは分散化に持っていかなければならない(10.12「一極集中から分散型社会へ」参照)
 
  動物との共生を図るということは、人間の人工生態系の安定を保つことに繋がる。カラスが迷惑な存在だと思ったら、それを駆除することを考えるよりも、自然の仕組みを応用してカラスの嫌がる警戒信号(カラスの警戒を知らせる鳴き声)を使って追い払う方が賢明なようだ。連作障害になる土中の線虫による被害を無くすために筆者はマリーゴールドの共植を行っているが、殺線虫剤という農薬よりはるかに効果が高いことを知っている。これは残留農薬による人間への影響もないし、線虫を殺すこともなく、単に遠ざけるだけである。このような自然の仕組みを応用した共生の仕方を考えるべきであり、無理やりウイルスなどを殺すことを考えるよりも、ワクチンなどで防御する方法を考えていくべきであろう。そして動物の中の有用なものを人間界に取り入れて、共助の働きをさせるということも高度な自然との共生の一環となると思われる。
 
 
 
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