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【時事評論2020】

ストレスポテンシャル論(2533文字)

2020-11-02
  ストレス論というものは世に多く出されており、筆者も以前このテーマでいくつか未発表論文を書いた(№164「ストレス論」・№220「性欲のストレスと犯罪」・№337「社会ストレスと戦争」・№466「社会学的ストレス論」・№927「ストレス指数」)。だが世に出ているストレス論の多くはストレスの内容に関するものであり、その程度や大きさを論じたものではない。筆者はそれでは不十分であると常々感じてきた。筆者はそのため「ストレス指数」というものを提案をしてきた。人はストレスの内容を聞かされてもその大きさが分からないと実感が湧かないからである。ストレスの種類とその大きさ、そしてそれが事象に与える影響の大きさを示せば、人は納得し易いであろう。そこでストレスをポテンシャル(力・位置エネルギー)という概念で捉えて、その大きさを示したらもっと分かりやすくなるのではないかと考え、「ストレスポテンシャル論」を展開してみようという気になった。これは寝る前の一服のときに思いついたアイデアである。
 
  「ストレス」というものは「歪(ひずみ)」とも言われ、正常な状態からの偏り、とも評される。人間で言うと、恒常性に与えられた歪、とも理解される。それは人間の場合、①身体上のストレス・②生活上のストレス・③職業上のストレス・④思念におけるストレス、に分類されるだろう。①は病気が該当するが、その他のストレスが身体に表れることも多く、その症状が何の原因によるものか分からない事も多い。②の生活上のストレスは経済的安定性に関わっており、また生命・財産の維持という意味での世の中の安定性にも影響を受けている。内戦状態にある国では、たとえ生活ができていたとしても安全が保障されておらず、生活ストレスは大きい。③の職業上のストレスは仕事そのもののストレスだけでなく、対人関係から来るストレスも大きい。そして最後の④思念におけるストレスとは何かを以下に説明しよう。
 
  思念におけるストレスというものは、さらにいくつかの項目に分けると分かりやすい。①自分の信条に反する状況から生じるストレス・②思想・信条・宗教上の理解し合える友人がいないことのストレス・③自分の信条・矜持が他者によって否定された時のストレス・④自分の信条・矜持を曲げなければならない状況(政府による思想弾圧・会社や上司による圧力)から生まれるストレス、等が考えられる。これらは精神的な抑圧に繋がり、目に見えないストレスではあるがその影響はかなり強力であり、鬱病などの原因になるとされる。
 
  問題はこれらのストレスを計量化できるのか、そのゲージ(物差し)にはどんなものがあるのか、ということにある。この問題は個々の事例によって異なると思われるので、筆者が上記未発表論文で取り上げた、「世界ストレス指数」を例に取り上げてみよう。これは「世界終末時計」と同じような発想に基づいているが、世界の、①核戦争勃発リスク・②環境破壊レベル・③資源消費傾向・④経済恐慌・⑤食糧難・⑥人心不安定度、の6項目を指標にした。これらを%で示し、重みを掛け算して合計で100となるように設定した。2017年8月12日の状況を当てはめて計算すると94.85となり、世界終末時計の45分間に換算すると、45×(100-94.85)/100=2分32秒前ということになり、終末時計の2分前とかなり一致する。当時は北朝鮮によるミサイル危機があった頃であり、2020年現在の終末時計は100秒前(1分40秒前)となっており、当時より終末が近づいているという認識になっているようだ。
 
  このような方法でそれぞれのストレスの物差し(ゲージ)を決め、それを直感的に計量化し、さらに重みを掛けることで合計を100とした指数化が可能である。最も簡明で誰にでも作れることから、汎用性があると思われる。そして個々のストレスについてポテンシャルという概念を入れ込むことで相対化し、より普遍的な指数化が可能になるかもしれない。
 
  たとえばストレスの原因になり得る要因の1つである「戦争」について、そのポテンシャル化を試みてみよう。人類の滅亡を最大のストレスとしてポテンシャル100とし、紛争や戦争のない平時をポテンシャル0、ないしは1とすると、現在の日本の状況は戦争ストレス「0」の状況にあると言っても良いであろう。中国はインドとの国境紛争、台湾との一触即発の状況下にあり、戦争ストレスを仮に5とすると、台湾に侵攻して通常兵器による破壊が起きた段階で一気に60~80にまで跳ね上がる。というのはこの戦争は局地的には留まらない可能性が大きいからである。もしアメリカが台湾を応援したりすると、さらに90レベルにまで引き上がるであろう。その次の瞬間には核戦争が起こっているかもしれず、けっして90という評価は極端なものではない。だがこの段階でまだ米中の主要都市が破壊されていないとすると、ストレスポテンシャルはもっと低く評価した方がいいのかもしれない。逆に状況理論から考えて次に起こる事象の可能性を考えると、95レベルに考えた方が妥当だとも言えよう。
 
  一方、中国でのポテンシャルではなく、たとえば北欧辺りの国からみれば、たとえ世界大戦に発展したとしても自国の参戦を考えないとすれば直接的被害を受けないことから、そのストレスポテンシャルをもっと低めの10程度に評価することも可能かもしれない。だが核戦争後に来る核の冬を想定すれば、その影響は北欧にも襲来することから、40位の高いポテンシャルを持つと考えるのも妥当かもしれない。いずれにしてもその評価は評価者各人によるため、必ずしも客観的とは言えないであろう。最終的にはその判断はより広範・高度な知識を学習したAIに任せる方が良い。人間は評価の仕組みを作ってAIにその判断を任せるべきであろう。
 
  現在のところ、筆者は専門的にこの評価を行っているわけでもないし、各種の評価を手掛けられるほど博学でもない。そのためこのアイデアは提案に留まっており、より広範な人々により、より専門的に具体的な評価が行われることを期待するのみである。
  
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