【時事評論2026】
国家の自然淘汰
2026-04-04
生命の自然淘汰について考えていたときに、ふと「国家についても自然淘汰があるのかもしれない」というアイデアが浮かんだ。国家というものを生命体になぞらえると、そうした考えが出てきてもおかしくはない。ある意味で国家にも寿命というものがあり、国家によってかなり異なるが、世界で恐らく最も寿命の長い国家として日本がある。日本が天皇を指導者として戴いてから少なくとも2000年以上が経っており、その間指導者の変遷はあったが、天皇制というものは一度も崩壊することなく続いてきた。「日本」という名称が定まってからもその変更はないが、第二次世界大戦当時に「大日本帝国」という名称が使われたことはある。こうした事例は世界広しと言えども他に類例はない。国家もその成立から消滅まで、寿命と言えるようなものがある。他国との戦争などにより、国家が敗退して新たな外国の指導者が統治を始めれば、新たな国家の誕生であり、新たな国家の歴史が始まったと考えるべきである。国家は生命体よりも複雑であり、体制の変遷・併合と分離・名称の変更などにより新たなものに変化が可能であるが、歴史的に観ると、完全に消滅してしまった小国家(王制国家)も多い。
ノムが問題にしたいのは、国家が消滅した場合の理由である。歴史が長いとされる中国の場合、「夏」から始まって数えられないほどの王朝があったし、その領土も激しく合従連衡してきた。現在の中華民国(台湾)は1912年に発祥しているが独立したのは1945年であり、共産党政権の根拠地は1927年に誕生したが、中華人民共和国という国家として安定したのは1949年であった。中国大陸の長い歴史の大部分は王朝・帝政の時代であった。列強豪族の支配により多くの国家が存在した。主として民族同士の戦争による領土の統合・分割の歴史であり、現在の中国は元々は少数民族であった漢族が主体となっている。支配下にある少数民族に対しては、中国化・漢族化が進められてきた。その漢族による民族支配と領土の統合は、さらに周辺国を侵略することで拡大してきた。チベット・モンゴル・ウイグルなどに対する侵略である。それぞれ独立した国家であったものを、侵略戦争で強奪した。他の国々でも同様であり、西洋諸国による大航海時代を経ての植民地支配だけでなく、ヨーロッパ大陸では国境は時代によって大きく変わった。最も悲劇的なのがポーランドであり、ポーランドは10世紀に建国されたが、王国時代・リトアニアとの共和国時代を経て、18世紀にはロシア、プロイセン、オーストリアによる3度の分割により、地図から一旦消滅した。第一次世界大戦後の1918年に独立を回復したが、第二世界大戦でナチス・ドイツとソ連に侵攻され、国土と独立を再び失った。戦後はソ連の影響下で共産主義体制となり、ポーランド人民共和国としてロシアに統治された。1980年になって「連帯運動」が起こり、1989年に共産政権が崩壊して第三共和国として民主化を果たした。
こうした事例を見ると、国家の消滅は他国による侵略・植民地化によるものだということが分かる。勿論、合意の下で行われたことはほとんどなく、全て武力による侵略が原因となっている。同様に国家の誕生を見てみると、もとから在った民族集合体が近代になって国家を名乗った例が多い。誕生から消滅までの国家の寿命について計算したものは知らないが、「国家体制の寿命」で検索すると「70年」という数字が示された。これはクーデターによる体制変更を含んでいると思われる。世界各国の建国年という視点から調べてみると、日本は最も古い国として紹介されているが、紀元前660年となっており、現時点で2686年の歴史を持つ。ただしこれは神話部分を含み、正確なものではない。日本では皇紀と言う形で伝承されている。2番目はサンマリノが挙げられており、AD301年だそうだ。建国記念日の由来となる歴史的年を見ると、大方は20世紀に誕生している。古い歴史のあるギリシャは1940年としていることには驚いた。ノルウェーは1814年である。古い方でハンガリーのAD.1000年がある。
現代では、国家が人間の集合体として独立を宣言することで国家が誕生する(24.10.25「国家論」)。だがその力が弱いと、周辺国などから軍事的侵略を受けて、領土を一部奪われるか、国家そのものが傀儡政権化することが多い。さすがに近年では国家自体の消滅はほとんどないように思われるが、大戦後に独立を果たした現在のアジアの国々の中には、滅亡・消失した王国が驚くほど多くある。それらの王国は現在の国家主体に吸収されていったのであるが、ほとんどが戦争という手段が取られている。つまり武力的・経済的に強い国が弱い国を侵略するなどして支配下に置くのである。これは「生命界での適者生存・弱肉強食」という原理と非常に近しい(21.12.23「適者生存の原理・弱肉強食の原理」)。世界政治でも弱肉強食の原理は有効であり、現在でもキューバやイランがアメリカから存続の危機を迫られている(26.3.7「トランプの世界支配のもくろみ」)。そしてもし、国家が消滅するようなことが起これば、その国家は「自然淘汰された」と表現されてもおかしくないであろう。現在の人間界では民主的原理というものは国家の範囲内でしか成立しておらず、世界全体で見れば弱肉強食の原理が働いている(21.1.4「民主主義は集団幻想」・21.10.9「現代の民主主義は本当か?」・24.12.7「民主主義の欠陥が露呈」)。
未来世界では、国家という存在は独立と主権のシンボルではなくなる。世界連邦という単一の組織の一部として、連邦の規定の下で自律国家として動くことになる。軍力を持たず、武器・兵器を持たない存在であり、いわば地方自治国としての位置づけとなる。国家が統治のために軍を動かすということは出来なくなり、軍事クーデターというものも無くなることになる。他国による侵略ということもなくなり、世界は人類史上初の戦争の無い時代に入るだろう。これは国家間の戦争が無くなることを意味しており、世界連邦による制裁や反乱鎮圧のための軍事行動は残ることになる。武器を持たない諸国家は、国家格を武器に、連邦議会に於ける外交努力で諸国間問題を解決しなければならない(20.10.18「国格ランキング」)。自ずと国家の自然淘汰というものは無くなり、世界連邦の決議による国家の人為淘汰だけが残ることになる。だが人間の持つ民族意識や国家意識からして、自分の所属する国家が無くなることに同意する人はいないであろうから、国家の消失ということ自体が無くなる可能性の方が大きい。ただし、未来世界の連邦による裁定で、国家の国境線や領土の変更はあり得ることであり、諸国家は連邦による裁定に従わなければ、江戸時代の改易と同様、領土と国家名称を取ら上げられ、周辺他国に再配分されるか、連邦による新たな国家が創造されるかの選択が迫られることになる(21.6.27「土地は誰のものか?」・21.9.13「国家の領土を問う」)。
(4.3起案・4.4起筆・終筆・掲載17:10)