【時事評論2025】
【時事短評】中国の「外国人優遇ビザ」が若者に不評
2025-10-26
今朝の産経新聞に、中国が優秀な外国人を集めるために、外国人に対して優遇ビザ(Kビザ)を出すことにした政策が、若者に不評だというニュースが載った。就職難に喘ぐ若者には、「断固反対/外国人は見たくない/中国は人材不足ではない」という意見が多いという。本来なら、「就職難の我々から職を奪うのか」という意見がありそうなものだが、そこまで直接的に指摘すると、お上からお咎めがあるのだろう。日本人から見ても妥当な意見だと言える。だが当局とも言える人民日報はこれに対し、「一部の人は政策を誤解して奇怪な論調を発し、不必要な不安を煽っている」と指摘したそうだ。だが日本人のノムからすれば、これらの意見は尤もなものであり、決して「奇怪」とは言えない。未来世界でこうした当局の批判がされれば、直ちにAIがその批判の妥当性を検証して、人民日報の組織格を下げるだろう(20.8.30「未来世界における人格点制度」・20.12.21「組織格を考える」)。国民の意見の方が正しく重要であることは明らかだからである。それでなくても都市部の16~24歳の失業率が18.9%という危機的状況であることから、反乱が起こっても不思議ではない。
危機的失業率というものは国によって判断が異なる。ガザのような戦時の場所では60~80%ともされるが、失業を理由にした反乱は起きていない。内戦の起きているスーダンでも60%という高率である。南アフリカという比較的安定している国でも33%と高い。日本は最も安定した国の一つだが、少子高齢化のあおりを受けて人手不足が言われるほどであり、失業率は2.5%である。5.5%が危機的状況だとされる。米国では10%が危機的ラインとされているようだ。欧州では8~10%とされる。おかしなことに、2024年の失業率ランキングでは中国は52位の5.2%となっている。これは中国全体の失業率であるため、直接比較することはできない。産経記事が取り上げている18.9%という数字は若年層のものである。だが最近に急激に若者層の失業が増えたことは間違いないであろう。日本ではこれまで韓国の若者の失業が時々新聞ネタになっている。韓国の失業率は2025年9月で2.5%と低いが、ここ1年で若者の失業率が5%と倍増しており、特に再就職が困難だという。これに対して中国の失業率が話題になることは少なかった。中国の若年失業率は、2023年6月に過去最高の21.3%に達し、その後、統計方法の見直しにより公表が一時停止された。中国では不都合な統計はしばしば公表されなくなる。2023年12月に再開された新しい統計方法では求職中の学生を除外し、雇用状況をより正確に反映させることを目指した。これは妥当な措置と言えるだろうが、2024年3月のデータによると、若年失業率は16.5%に低下したことになっている。それが今再び、過去最悪の18.9%と上昇しているというのは、確かに危機的状況であると言えよう。
中国の若者失業率が高い理由には、大卒が急速に増えたことがあるという。また求職者の意向に沿った職業が少なく、ミスマッチが起こっているせいだという。求人側もAIの急速な普及に伴って、求人条件をより高度化しており、国家としても人材不足だと感じているようである。そこで上記したKビザ政策を取り入れて、外国人であっても先端技術に投入しようとし始めたのである。米国では中国系研究者が多く、それなりに優秀な成果を出しているが、米国は逆に中国人などに職を奪われると考える人が多く、外国人排斥に動いている。トランプが9月に専門技術を持つ外国人労働者のビザ申請費用を1520万円という非常識な額に引き上げたのは、明らかに外国人排斥政策である。これは米国の技術力を大幅に下げる一要因となるであろう。中国はこれを追い風とみたようである。外国人であっても世界から人材を集めることで、技術力の差を一気に縮めようとしている。だがそれはある意味で反作用としての国内不安定に繋がる危険もある。中国在住外国人は2020年の国勢調査で90万人であるとされる。中国の人口に比べると圧倒的に少ない。これは中国の国内安定のために外国人受け入れを制限してきたからに他ならず、外国人もまた中国に行きたいとは思わない。だが中国は既に2008年に「千人計画」を習が企画して専門技術者や研究者の獲得に努めてきたという経緯がある。今回の措置もその延長線上にあると言える。
今回のKビザが与える影響は、単に若者に不評だというだけでは収まらないだろう。人民日報は「中国が未来を勝ち抜くためには、世界の優れた人材を集めて活用しなければならない」と説いており、それは妥当のように見える。だがそれによって国内が不安定になるようでは、習政権が思うような期待が実現する前に、国内に騒乱が起こる可能性が極めて高くなるとノムは考える。習政権は物事を長期的に考え、国内で人材育成をしていくべきであろう。姑息な手段を取れば、それ相応の報いが将来に待ち受けていると考えるべきである。だが習は自分の権威があるうちに、全ての願望を叶えたいと考えているフシがある。台湾併合もその一つであり、米国を経済的にも技術的にも追い抜くのもその一つである。研究分野ではかなり成果を挙げていることから、あとはノーベル賞の数で西側を追い抜くことだけが課題として残されている。それらの願望を全て叶えようというのは、余りにも欲が深すぎると自戒すべきであろう。
(10.26起案・起筆・終筆・掲載11:15・改題追記11:40)