【時事評論2024】
【時事短評】トランプの嘘が米国を滅ぼす
2024-12-12
現代において、トランプほどの傲慢な大ウソつき、あるいは大言壮語人間は居ないと見ているが、最近になってそれは増々エスカレーションしているようである。12月7日にプレゼントオンラインで国際ジャーナリストの矢部武が、移民阻止問題でトランプが主張していることが行われると、米国が滅びる可能性があることを指摘してくれたが、それを含めて、トランプのほら吹きが米国を危うくするリスクがあることをノムも指摘しておきたい(矢部の記事を一部引用)。
矢部武は「いまのアメリカは不法移民なしでは、成り立たない。トランプ氏は『不法移民を国外追放する』と主張しているが、アメリカ経済に深刻な悪影響が出ることになる」と指摘した。トランプは選挙戦中に「不法移民が殺人を犯し、麻薬王が国を破壊している」と繰り返し述べ、一種の陰謀論を展開してきた。「麻薬王」などという言葉は政治の世界では使ってはいけないものであるが、トランプはバカな選挙民に分かりやすくするために、こうした過激な象徴的言葉をしばしば使ってきた(21.9.26「愚民論」)。だが不法移民が殺人を犯しているというのは、数例の事例を使って全体に拡大した大法螺の端的な事例である。彼はこの主張から「私が当選したら、アメリカ史上最大の大量強制送還を行う。彼らをすぐに国外追放する」といった公約を掲げ、4年ぶりに大統領への返り咲きを果たした。大統領選の投票日まで約1カ月半と迫った9月18日に発表されたスクリプスニュース/イプソスの世論調査では、回答者の54%が「数百万人の移民を強制送還する大規模な取り組みを“強く”、または“ある程度”支持する」と答え、59%が「米国とメキシコの国境の移民状況を注視している」と答えていた。つまり国民の約半数が彼の嘘に騙されたことになる。
トランプはバイデンの移民政策についても嘘を付いた。トランプは「バイデン・ハリス政権の移民対策は最悪だ。国境を開放したため、世界中から不法入国者が押し寄せた」などと激しく批判し続けたが、バイデン政権は決して国境を開放したわけではない。2024年6月に国境警備を強化し、入国者の数を厳しく制限する対策を講じたことで、翌7月から不法入国者の数は激減し、同政権発足前(つまりトランプ政権時)の低い水準に戻っていたという。
トランプの典型的な嘘は、「不法移民の犯罪率は高い」というものだ。しかし、実際には不法移民が強盗・傷害・殺人などの暴力犯罪に手を染める割合は米国生まれの市民よりはるかに低い。連邦司法省(DOJ)傘下の研究・教育機関である国立司法研究所(NIJ)が、メキシコとの国境沿いにあるテキサス州の公安局が収集した過去の犯罪データをもとに行った分析調査によれば、不法移民が暴力犯罪と麻薬犯罪で逮捕される割合は米国生まれの市民の半分以下、また財産犯罪(窃盗、詐欺など)においては米国生まれの市民の4分の1以下であることがわかったという。この調査は2012年から2018年までにテキサス州内で逮捕された全ての人の犯罪記録と移民ステータスを調べ、不法移民と合法移民、米国生まれの市民の3つのグループの暴力犯罪と財産犯罪の犯罪率を比較分析したものだ。全体を通して不法移民のグループはほとんどの犯罪において最も低い犯罪率を示し、逆に米国生まれの市民の犯罪率は最も高く、合法移民は両者の中間を示したという。
強硬的な移民政策を掲げるトランプは11月10日、トランプ前政権時にも移民政策を担ったトム・ホーマン元移民関税執行局(ICE)局長代理を「国境管理責任者」に任命し、さらに18日には「大量強制送還を実施する計画の一環として非常事態を宣言する用意がある」とSNSに投稿した。これは韓国のユン・ソンニョル大統領が実際に発令して世界を驚かせたが、非常事態宣言や戒厳令は平時における国民の権利を制限するものであり、戦争・ウイルス禍・ハリケーン禍といった重大事に発令されるものであり、移民政策という平時対策にもちいられるはずはないのであるが、トランプは憲法を含めて、移民を阻止するための政策執行に妨げとなる法律を無視することを狙って、非常事態宣言を使おうとしているのである。
移民の強制送還のためには、まず不法移民を逮捕しなければならない。1330万人と言われる不法移民を逮捕するのにどのくらいの時間と費用が掛かるか、計算するまでもないことで、これは事実上不可能である。一説では彼ら全員を逮捕・拘束し、司法手続きを経て送還するには10年以上の年月が掛かるという。だがトランプは、正常な手法での強制送還を考えておらず、州軍と連邦軍を総動員しようと考えているようだ。だが逮捕した不法移民を軍用機で強制送還するまでの間、一時的に拘束しておく数百から数千の施設が必要である。その建設費用は莫大なものになるだろうが、彼は土地の取得と施設での雇用の増大を含めて、自分自身の一族が莫大な利益を得ようとしているようだ。不動産ブローカーとしての悪知恵を働かそうとしていると思われる。
連邦軍の利用に関しては、米国には「民間人に対して連邦軍を使用しない」という規則があるため、トランプは「不法移民は民間人ではない。彼らはわが国への侵略者だ」と主張している。非常事態を宣言すれば、そうした言い訳は必要無くなり、大統領の権限で軍隊を使えるようにしようという狙いではないかと思われる。
強制送還にかかる膨大な予算は、非常事態宣言をすれば確保しやすくなるという。その費用はおおよそ145兆円に達すると予想されているらしい。不法移民逮捕に要する人件費を差し置いたとしても、一時拘留施設の建設と、強制送還に掛かる航空運賃、もしくはバスによる移送費が掛かるだろう。後者については、軍の輸送機を使うつもりらしいが、とても足りるものではない。トランプは莫大な費用がかかることについて、「これはお金の問題ではない。不法移民が人を殺している。選択の余地はない」とデタラメを以て言い切っている。現実的な問題として、不法移民が納めている税金が無くなるという問題もある。移民研究センター(CIS)の調査によれば、不法移民は連邦・州・地方税に970億ドル(約14兆円)を納めているという。
移民の強制送還のためには、まず不法移民を逮捕しなければならない。1330万人と言われる不法移民を逮捕するのにどのくらいの時間と費用が掛かるか、計算するまでもないことで、これは事実上不可能である。一説では彼ら全員を逮捕・拘束し、司法手続きを経て送還するには10年以上の年月が掛かるという。だがトランプは、正常な手法での強制送還を考えておらず、州軍と連邦軍を総動員しようと考えているようだ。だが逮捕した不法移民を軍用機で強制送還するまでの間、一時的に拘束しておく数百から数千の施設が必要である。その建設費用は莫大なものになるだろうが、彼は土地の取得と施設での雇用の増大を含めて、自分自身の一族が莫大な利益を得ようとしているようだ。不動産ブローカーとしての悪知恵を働かそうとしていると思われる。
連邦軍の利用に関しては、米国には「民間人に対して連邦軍を使用しない」という規則があるため、トランプは「不法移民は民間人ではない。彼らはわが国への侵略者だ」と主張している。非常事態を宣言すれば、そうした言い訳は必要無くなり、大統領の権限で軍隊を使えるようにしようという狙いではないかと思われる。
強制送還にかかる膨大な予算は、非常事態宣言をすれば確保しやすくなるという。その費用はおおよそ145兆円に達すると予想されているらしい。不法移民逮捕に要する人件費を差し置いたとしても、一時拘留施設の建設と、強制送還に掛かる航空運賃、もしくはバスによる移送費が掛かるだろう。後者については、軍の輸送機を使うつもりらしいが、とても足りるものではない。トランプは莫大な費用がかかることについて、「これはお金の問題ではない。不法移民が人を殺している。選択の余地はない」とデタラメを以て言い切っている。現実的な問題として、不法移民が納めている税金が無くなるという問題もある。移民研究センター(CIS)の調査によれば、不法移民は連邦・州・地方税に970億ドル(約14兆円)を納めているという。
最大の経済的問題は、不法移民が担ってきた低賃金労働者が居なくなるということにある。被害を受けるのは移民だけでなく、米国民も同様だという。結果として経済が縮小してしまうからだという。不法移民のうち800万人から900万人が労働力として米国社会を支えており、一般的に米国人がやりたがらない重要な仕事(エッセンシャル・ワーク)や労働力が不足している分野で働いている(12.4「必須労働者」)。たとえば、建設業・農業・レストランの厨房(飲食サービス業)・製造業などだが、特に多いのは建設業と農業だという。建設業では労働者全体のおよそ14%を占めている。不法移民が居なくなると、建設費が上昇し、住宅が手に入りにくくなる。ニューヨークなどの大都市には“作りかけのビル”が立ち並ぶおそれがあるとも言われる。農業では生産量が落ち込み、食料価格が高騰するだろう。失業中の白人は、雇用が出来たとしてもこうした現場では働きたがらない。トランプは真面目な不法移民をも、一緒くたに追放してようとしているのだ。
一方、歴代の政権も不法移民問題には悩まされ続けてきた。その中でも特に評価が分かれたのは、1986年に共和党のロナルド・レーガン大統領が署名して成立させた「移民改革管理法(IRCA)」だ。これは、1982年以前に入国した不法移民全員(約300万人)に恩赦を与えるもので、約290万人が名乗り出てグリーンカード(永住権)を付与され、合法的に滞在できるようになった。レーガン大統領は「たとえ過去に不法入国したとしても、この国に根を下ろして暮らしている人たちには恩赦を与えるべきだと私は信じている」と述べて、反対派の議員を説得した。しかし、その後、「1986年の恩赦は他の国の人々に米国への不法入国を促すものとなった」などの批判が出て、恩赦はなくなり、国境警備が強化された。それでも不法移民は増え続けた。
2009年に発足したオバマ政権は寛容さと厳しさを組み合わせた移民対策を実施した。厳重な取り締まりを行って8年間で約300万人の不法移民を強制送還し(どの歴代政権よりも多い)、その一方で子どもの頃に米国に連れてこられた約75万人の不法移民が合法的に滞在できるようにするための「若年移民に対する延期措置(DACA)」を講じた。
バイデン大統領は2020年の大統領選で、「米国に住む1100万人の不法移民に8年間で市民権を取得できる道筋をつける」と公約したが、「さらなる不法移民を引き寄せることになる」との共和党議員らの反対もあり、実現できなかった。だが現在、不法移民はさまざまな産業分野の労働力を支え、年間1兆ドル(約150兆円)の収入を生み出し、この額は米国のGDPの約3.5%を占めている。
2009年に発足したオバマ政権は寛容さと厳しさを組み合わせた移民対策を実施した。厳重な取り締まりを行って8年間で約300万人の不法移民を強制送還し(どの歴代政権よりも多い)、その一方で子どもの頃に米国に連れてこられた約75万人の不法移民が合法的に滞在できるようにするための「若年移民に対する延期措置(DACA)」を講じた。
バイデン大統領は2020年の大統領選で、「米国に住む1100万人の不法移民に8年間で市民権を取得できる道筋をつける」と公約したが、「さらなる不法移民を引き寄せることになる」との共和党議員らの反対もあり、実現できなかった。だが現在、不法移民はさまざまな産業分野の労働力を支え、年間1兆ドル(約150兆円)の収入を生み出し、この額は米国のGDPの約3.5%を占めている。
トランプが選挙公約として打ち出した不法移民の強制送還について、少なくとも半数以上の米国愚民がこれを支持したようである。だがそれが実際に執行された場合、米国経済がどうなるかを考えた人がどれ位いるのだろうか。米国が衰退の時期に入っていること、再び復興することは歴史的に言ってほとんど望めないこと、を認識している米国民はどれほどいるのだろうか。そういう意味では、トランプが米国を滅ぼすというよりも、米国民が米国を衰退に追いやっている、と見た方がいいのかもしれない(20.11.13「米国の衰退」)。
トランプは希代の大ウソつきでありペテン師であり、大言壮語する大衆迎合主義者(ポピュリスト)である。またその態度は傲慢で、王様気取りであり、各国の首脳を豪壮な自宅に招いて会談を行うという自己宣伝者(アピーリスト:筆者造語)である。そのような時代錯誤の権力信奉者を、米国民は2度も選んだ。最初の選挙はロシアの選挙介入で僅差の勝利であったが、2度目の今度は、ロシアが介入するまでもなく、米国民自身が選択したものである。「2度あることは3度ある」と云うが、トランプには年齢から言って3度目のチャンスはない。だが米国としては、同じような権力主義者をまた選んでしまう可能性が極めて高い。米国が衰退すればするほど、その機会が増えるだろう。そしてそれは、もしかしたらイーロン・マスクかもしれない。
(12.7起案・起筆・12.12終筆・掲載16:50・追記17:15)