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【時事評論2021】

生命進化は巨大な犠牲の上に成り立つ

2021-06-07
  生命というと、人間の多くは自分の命のことか、人類のことしか考えない人が多い。日本人は自然というものを愛するが故に、世界は生命に溢れていると思う人は多いが、それでも毎日無数の生命を犠牲にしていることには想いが及ばない。そしてほとんどの人が、「生命進化」という素晴らしい自然の恵みを絶賛しているに違いない。だが生命進化は巨大な犠牲の上に成り立つ現象であり、自分がその犠牲になることなど露ほどにも思わないのである。進化というものがいかに凄まじい生存のための闘争であるかをもう一度思い返す必要があるとノムは考えた。

  最初に進化というものがどういう局面で起こるのか、そのための準備として生命が払っている犠牲というものを考えてみよう。生命は環境に適応するために進化してきた。ある時代の特定の環境では多種多様な生物が生存競争を続けており、その中の比較的環境に馴染んだ種が優勢になる。「適者生存の原理」である。それは「弱肉強食の原理」も伴うが、必ずしも強いものが生き残るわけではなく、あくまでも環境に適した種が生き残る。これを「自然淘汰」という。だがその中で生命は環境が変化するときのために、DNAなどに絶えず改変を加えており、突然変異とよばれているその作用によって生まれた新種なり奇形なりは、環境が変化しない限り弱者として滅びていく。仮に変異が1%に生じたとすると、その1%は死にゆく運命にある。

  だが環境に変化が生じたときには、その1%の中のまた1%程度が適応できるかもしれない。そうして生き残ったわずか0.001%から進化が始まる。その割合はもっと極端に低いものであろうと思われるが、あいにくそれについて書かれた記事なり論文を知らない。環境の変化には、①温度変化(寒冷化など)・②生息域の状態変化(水域⇔陸域)・③大気組成変化(酸素の減少・二酸化炭素の増加など)・④紫外線と宇宙線の影響、等があり、それらは地球の場合、地球外での出来事や地殻変動によって起こることが多かった。たとえば42億年まえの地球の磁場発生は太陽風を遮ることで深海や間欠泉地下で誕生した生命が地表に移動するに寄与したとされる。自然放射線のもたらす突然変異により、熱エネルギーから太陽光エネルギーを利用するように進化した結果、多種多様な生物がもたらされた。これを第二次生命体ということもある。

  二次生命としての植物プランクトンは大量の死骸を海洋底にもたらし、また廃棄物として大量の酸素を放出し、それは大気組成を大幅に変えた。すると今度はそれを利用して餌とする有機物を分解する動物プランクトンが誕生する。だが両者は相互補完関係にあったために、両方とも大増殖した。現在動物のバイオマス量として最大なものは北極海などに棲息するオキアミという動物プランクトンだそうだ。そして数の上ではウイルスが最も多いと考えられている。ウイルスを生物界ではいまだに非生物として扱っているようであるが、明らかに不完全な形ではあるが生命体である。

  生命が誕生したのはおよそ40億年前と考えられているが、41億年前に最初の生命体の絶滅があったとする説もある。前記した42億年という数字もあることから、細かい数字にはこだわらないことにしよう。この絶滅は地殻変動によるもので、猛毒物質を含む海水が多くの微生物を絶滅させたという。だが生命はこの猛毒物質を取り込まないシステムを作り上げた。また生命同士の融合やDNAの取り込みによって、さらに生命の多様性が生まれた少なくとも5回の大絶滅があったが、その度に生命は多様性を創り出して繁栄を続けた。絶滅と進化は表裏一体のものである。

  生命進化で重要なエポックは、情報伝達物質としてRNAやDNAを持つようになったことであると言われる。だがそれが最初から生命に備わっていたものか、最初は液滴状の代謝系であったのか、それともタンパク質の膜で外界と隔てられた代謝系だけであったのか、議論はまだ続いている。

  5.8億年前のガスティアス小氷期で再び絶滅が起きたが、その後にエディアカラ動植物群と呼ばれる生物多様性が発生した。大型の軟体動物が海に現れた。外部を固い甲冑で守る外骨格生物も現れた。5.4億年前になると再びバイコヌール小氷期が訪れ、エディアカラ動植物群の絶滅のあとに突如生物の多様性が一気に増した。これをカンブリア大爆発とも呼び、カンブリア動植物群は大型化・多様化を増した。それはロディニア超大陸が生まれたことによる。地下から放射性元素に富んだマグマが噴出する火山爆発が進化に影響したともされる。ある場所で多様性が生まれることを「茎進化」と呼び、2つの大陸が合体したときに新種が生まれる進化を「冠(かんむり)進化」と呼ぶことがある。カンブリア大爆発ではこの両方が起こり、現在の種のほとんどを創ったとされる。この頃、植物と昆虫の共進化が始まる。カンブリア期には脊椎動物も出現し、魚類となった。魚類から両生類、爬虫類、哺乳類、そして人類へと繋がる。

  2億6000万年前にパンゲア大陸が誕生した。大陸に取り込まれた海水の塩分は堆積し、再び溶け出すことはなかったことで、海水中の塩分濃度は下がっていった。こうして汽水域の生物が海洋に進出したのである。大気中の酸素濃度が高まるにつれ、大気上層にオゾン層が形成され、紫外線が減ったことで生物の陸上への上陸が始まった。陸上に植物が大繁栄した結果、現在よりも酸素濃度は1.5倍も高くなった。この頃の植物遺骸の堆積物が、現代の石炭などになった。両生類の一部が肺機能を獲得して上陸し始めた。

  2.6億~2.5億年前の顕生代に入った頃、太陽系が暗黒星雲と衝突したことで、再び宇宙線の激しい到来に見舞われ、地球が極寒期に入ったため、生物には大絶滅が起きた。最初に植物が大打撃を受け、それを餌としていた菜食動物、さらにそれを餌としていた肉食動物が絶滅していった。順調に進化を遂げてきた生物は、再び古生代のような状況になった。だが既に進化が進んでいたため、それからの立ち直りも早かった。パンゲア大陸では生き残った両生類から爬虫類が生じ、さらに哺乳類へと進化した。哺乳類と言ってもネズミ程度の大きさの夜行性動物(アデロバシレウス)であり、それは後に胎盤を持つものに進化した。この進化にはウイルスの遺伝子の取り込みがあったことが近年に分かってきた。爬虫類は大型化し、恐竜時代と呼ばれる黄金期を迎えていた。この頃大陸が分裂を始めており、茎進化が進んだ。パンゲア大陸の北側では大陸が再度合体し、冠進化が進んだ。植物には被子植物が誕生し、これも多様化が進んだ。

  霊長類の誕生ゴンドワナ大陸のリフト帯で起こった。ゴンドワナ大陸はさらに南米大陸とアフリカ大陸に分離した。南米大陸に渡った霊長類の祖先は孤立進化し、新世界ザルと呼ばれる種になる。アフリカ大陸では旧世界ザルと呼ばれる種に進化した。インド大陸ではロリスに進化した。マグマプルームの上昇が陸地の分断を引き起こし、それぞれの環境に適応した形態進化を遂げていく。

  太陽系が再び暗黒星雲と衝突したことにより、寒冷化が進み、生態系に打撃を与えた。さらにユカタン半島の場所に直径10キロと推定される小惑星が衝突し、これが最終的に恐竜を絶滅させた。恐竜絶滅が数百年に亘った理由はここにある。すなわち小惑星衝突以前から恐竜は寒冷化でその数を劇的に減らしていたのである。

  6500万年前から現代までは新生代と呼ばれるが、この時代にアフリカのリフトバレーで火山活動が活発になり、放射線に富んだマグマが地表に出てきた。これにより、特にアフリカの大地溝帯で旧世界ザルから新種が進化し、これが人類の遠い祖先となった。ホモサピエンスが生まれたのもこの地域であると考えられている。哺乳類が誕生したのにはウイルス感染による大量死が犠牲となった。そしてこのウイルスのDNAが哺乳類の胎盤を生み出したという最新の説がある。ホモサピエンスの誕生にもウイルスが関係しているらしいことがやはり最近言われ始めているが、放射線による突然変異説がこれまで唱えられている。ホモサピエンス以前からのこの時代を「人類代」と呼ぶことがある。人類が他の霊長類と異なっていたのは、遺伝子の中の「HAR」と呼ばれるDNA領域の違いと言われる。これによってヒトは脳を巨大化させて言語能力思考能力を得たことで、意識・記憶・創造性などを獲得した。脳の容積は180万年前・60万年前・20万年前と3回にわたって不連続に増加している。丁度その頃、巨大噴火が起きていることから、放射能レベルの高いHiR(ハイアール)マグマの噴火が茎進化を促したと考えられている。

  約120万年前からヒト属は他の地域に進出していった。約20万年前にアフリカから中東に向かったホモサピエンス(人類)を「ミトコンドリアイブ」と呼ぶことがある。ミトコンドリアの分析から、人類が一人の女から現代に繋がっているという意味である。1万5000年前には北米や中米に達し、1万年前には南米の突端にまで達している。ヨーロッパに先に進出して進化していたネアンデルタール人とその後にヨーロッパに拡散したホモサピエンスの間にはどうも生存競争があったようだ。集団性を持つ弱小なホモサピエンスが勝利して繁栄したのは非常に興味深いことで、これは教訓にする必要があるだろ。

  1万年前に農業・牧畜が始まり、人口は爆発的に増加し始めた。この頃から人類は分業という職業化を始めている。5000年前ころから都市を作るようになり、交易が始まっている。それによって巨大河川に沿ってエジプト文明・メソポタミア文明・黄河文明・インダス文明などが生まれ、「都市革命」が起こった。都市では貨幣・経済・法律・裁判・警察の機能分化が生じた。2400年前頃には宗教・哲学が形になって表れ、「宗教・哲学革命」とも呼ばれている。民族・宗教・領土の違いから抗争が起こり、文明の衝突も起こり始めた。当初は世襲制の王族支配であったが、やがて宗教がこれを統一に導いた。ヨーロッパなどの先進国で民主化が起こり、選挙でリーダーを選ぶ民主政治が主流になった。300年前にイギリスで科学に基づく技術革命が起こり、「産業革命」と称せられる。人力・動物力・水力から、燃料を使用した動力に替わり、ここから人間は環境を汚染し始めた。特に蒸気機関車による鉄道が瞬く間に世界に伝播し、物資輸送に革命をもたらした。自動車や飛行機が用いられるようになると、汚染は一気に世界に拡大し、あっという間に気候に変動をもたらすほどの影響を地球に与え始めた。人類世界は空前の豊かな時代を迎えたが、その限界が見え始めた。人口圧による紛争・戦争の頻発である。すなわち人口ストレスが人間世界を崩壊の危機に晒している

  その端的な事例が第一次世界大戦・第二次世界大戦であった。第一次世界大戦では1600万人以上、第二次世界大戦では8000万人以上が犠牲となった。第三次世界大戦ではおよそ人類の1/3に相当する20~30億人が犠牲となるだろうとノムは推定している。だがこの程度の犠牲は進化の過程で起きた生物の犠牲とは比べものにならないほど小さいものである。2080年頃までに起こるとノムが予想している二酸化炭素3%による窒息死の状況が現実になれば、動物のほとんどが絶滅することになる。だがその中で必ず生き残る種があるのであり、進化が再びそこから再出発する。これまでに何度も起きた寒冷期による絶滅と似たような状況かもしれず、あるいは植物だけがジュラ紀のように大繁茂して、小動物がその片隅で生きながらえるという状況かもしれない。

  は自分がその運命に巻き込まれるとは露ほどにも考えていない。だがそれは確実に起こる自然の摂理であり、その生物大絶滅を引き起こしているのが人間であるということにも誰も気づいていない。およそ生物学者の7割がこの人類代に生物の大絶滅が起こっていると認識しているようだが、一般の人では0.01%にも満たないであろう。その大絶滅を認識している生物学者ですら、人間が滅びるということまで予想している人はごくわずかである(西澤潤一・上墅勛黃共著『人類は80年で滅亡する』)。学者が、現実を見たくないと言う理由で認識にバイアスを掛けてしまうというのはおかしなことであるが、学者の中の誰も人類大絶滅について述べていないところをみると、やはり学者の、立場を守ろうとする利己心が働いているとみるのが妥当であろう。

  現代は地球環境がわずかに変化する兆しを見せており、そのわずかな変化は特に動物界に大打撃を与えることは明々白々である。人類について言えば、酸素濃度が変わらなくても、二酸化炭素が3%になるだけで労働というものができなくなり、ひょっとすると思考すらできなくなるかもしれない。そうなると現代文明は崩壊することになる。それによって食糧危機が起こり、多くの人が餓死を免れない。そうなる前に人間の生存本能が働いて闘争が起こり、第三次世界大戦が勃発することになる。もしそうなった場合、人類は環境に適応するために何らかの進化を余儀なくされるノムはその進化によって誕生する新人類をネオサピエンスと呼ぶが、それは旧人類(我々)との闘争を勝利して未来世界を構築するだろう。すなわち「人類の進化には巨大な犠牲が必要だった」、ということが、その時になって改めて認識されるだろう。




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