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【時事評論2021】

韓国と北朝鮮の飽くなき兵器開発競争

2021-04-03
  このところ韓国と北朝鮮は張り合って兵器開発を誇示している。韓国には核兵器が無く、北朝鮮は所持を誇示しているため、韓国としては劣勢を通常弾頭の大型化によりカバーしようとしているようだ。だが北朝鮮はかつてはアメリカを恫喝するための核ICBMの開発に全力を注いでいたが、アメリカが一向に相手にしてくれないことで、戦争目標を韓国に定め直したようだ。そのため近距離・中距離ミサイルに核兵器を搭載することを急いでいる。またSLBM(潜水艦発射ミサイル) の完成と搭載潜水艦の建造を急いでいるとされる。4月2日のロイター記事は、このような韓国と北朝鮮の間で軍備競争が始まっていることに危機感を呈した

  北朝鮮は核開発に邁進してきたが、それはアメリカの圧力を撥ねつけるためであり、またアメリカとの間に有利な交渉を展開するためであった。だが米朝会談が無成果に終わったことで、ジョンウンは目標を韓国に定め直したようである。韓国はアメリカと軍事同盟関係にあるが、弱腰である韓国を脅せば、必ず見返りが得られるはずだと考えているのであろう。だがその読みは甘すぎる。韓国のムン大統領の任期はあと1年であり、その後の政局は全く読めないからである。もしかしたら北朝鮮に挑戦的になるかもしれない。ジョンウンはそれも読みに入れているのかもしれない。その用意のために、韓国を凌ぐ軍事力を備えておかなければならないと考えているのかもしれない。北朝鮮は最近は短・中距離ミサイルの性能向上にやっきになっている。米シンクタンク、アトランティックカウンシル上席研究員で、かつて米国の諜報部門で北朝鮮担当だったマーカス・ガーロースカスによると「北朝鮮側の発言に基づけば、彼らのSRBM(短距離弾道ミサイル)でさえ核弾頭搭載が可能だと見なされなければならない」そうである。北朝鮮の最新型ミサイルは低空を飛行して、目標到達直前に高度を上げる能力も示しており、そうなると探知や迎撃が難しくなるという。このタイプのSRBMが戦力化された場合、韓国内の特定目標に命中する確率が従来のタイプよりもずっと高くなる。

  韓国側にはまた別の事情があるようである。何かというと日本の軍事力との比較をしたがる韓国であるが、北朝鮮との軍事力の比較をした報道があるのかどうかを知らない。だが空母の保有をほのめかしたり、ミサイル実験の成果を誇ったりしているところをみると、一応北朝鮮に対抗する軍事力を強化しようとしていることは明らかである。韓国は2020年の玄武4の発射実験後には、地下の発射基地破壊を目指す新たな地上発射型ミサイルの量産化にも乗り出すと発表している。北朝鮮に地下サイロ発射基地があるのかどうかを知らないが、韓国がそういうことを目指しているならあるのかもしれない。大型通常爆弾で破壊できるものかどうかは分からず、未知数である。韓国はさらに妄想を進化させ、ムン大統領は韓国のミサイルの能力は「世界クラス」だと強調した。問題は能力ではなく、それが実行可能であるかどうかである。

  韓国は2つの戦略を持っているらしい。その戦略とは、北朝鮮の攻撃計画を探知して核施設やミサイルや長距離兵器を先制して破壊できる「圧倒的反応」と、北朝鮮指導部の「除去(抹殺)」を含めた「戦略目標攻撃」だそうだ。これもまた妄想である。そもそも日本よりもミサイル発射探知能力が劣っていると言われる韓国が、北朝鮮の攻撃計画を探知できるはずもなく、また先制攻撃などできるはずもないからである。そんなことをしたらアメリカからも見放されて、同盟を解除されてしまうだろう。ジョンイルは地下数百メートルに及ぶ退避壕を持っているそうだ。それを破壊するということは相当難しいことであり、実験もしていないのにそれを戦略として打ち出すことは単なる国民向けのプロパガンダにすぎない。

  もっと恐ろしいことに、ジェームズ・マーティン不拡散研究センター(CNC)のミサイル研究員によれば、ムンは北朝鮮の武器に対抗する武器を持ちたいという嫉妬心があると指摘する。もしそうだとすると、韓国は核兵器すら所有したいと願うかもしれない。これまでは「朝鮮半島非核化」という理念に賛同してきた手前、国内でも日本と同様核兵器開発の議論は表立って出てきていないが、危機が迫ればその議論も当然出てくるであろう。韓国の戦略が単なる嫉妬心から出ていると考えると、上記の無謀な戦略が出てくるのも納得できるというものである。

  2つの同民族の体制の異なる国家同士が、不信感から兵器開発競争に走り出したとすると、それは偶発的衝突から通常兵器戦争に発展する可能性が高まったということになる。恐らく北朝鮮は韓国を狙う際、SRBMで事足りると考えているようだ(韓国の首都ソウルは国境から60km)。それの量産化を国家方針として掲げたことからもそうした戦略が垣間見える。と同時に、核兵器搭載のSRBMの発射を恫喝として用い、韓国の反撃を思い止まらせるであろう。彼らが懸念するのは駐留米軍の存在であり、米国の同盟国を守るための反撃である。だが駐留米軍に対する核兵器使用を宣言することで、いわば米軍を人質に取る戦略も考えているだろう。こうしたことからとても朝鮮戦争時の休戦状況を作り出すことはできなくなり、一気に全面戦争に向かう可能性が95%であろうと筆者には思えるのである。米国が北朝鮮に対して話し合いの場を求めて接触の努力をしているようだが、目下のところその努力は水泡に帰している。あとは運命がどのように我々を導くか見守るしかない(20.11.7「運命論」参照)




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