【時事評論2020】
未来世界の経済を考える(2694文字)
2020-11-28
「未来世界の経済」については2012年2月7日に同名のタイトルで論文を書いたが、残念ながら未完に終わっている。その後、株の取引・貴金属や株の先物取引などを実際に経験して勉強してみたが、経済は未だによく分からない。経済学にも経験則やそれなりの法則はあるのだが、そのどれもこれまでの大きな経済変動を予測し得たとは思えないし、実際の経験でも全く役に立たなかった。あるソフトを購入して株価を予測してみたが、反って上がり下がりの単純な予測だけでも当たったのは50%以下の確率であった。これではサイコロを転がした方がマシである。自分で予測をしてみると、1週間ほどでソフトの予測よりも当たるようになったが、それでも50%を多少上回る程度であった。「経済は生き物」とよく言われるが、それ以上に難しい問題であると思う。
そんな筆者が経済もろくに知らないのに未来世界の経済を論じたいと思ったのは、仮眠しているときにふと思いついたアイデアが浮かんだからであった。イスラム世界ではコーランの規定に「利子を取ってはいけない」というものがあるようだが、それを真似たわけではないが、無利子の経済というものが成り立つのだろうか、もしかしたらそれは未来世界の価値観に相応しいのかもしれないと考えた。現在でも金は利子を生まない世界通貨としての役割をある程度果たしているということも念頭にあった(№085「金の通貨としての性格と世界経済」)。そこでいろいろなステージを想像して考えてみたが、考えれば考えるほどそのアイデアは素晴らしいものに思えてきたのである。以下では各ステージにおいてこのアイデアを検証してみたい。但し、以下の記述は未来が連邦の下に国家を含めて単一の経済組織に統一されていること、通貨は「Universal Currency=UC:世界通貨」に統一し、紙幣などの現物通貨は無くなり、デジタル通貨のみとなること、真社会主義体制となり、ノム思想の下に世界が運営されること、を前提にしている(№800.未来世界における通貨と単位の統合(2015.8.14起案/19.7.17起筆・終筆/19.8.5追記)。
1.家庭:銀行に預けても利子はつかないので、貯蓄はタンス預金でも良いことになるだろう。銀行に預ければ、引き出しの際に手数料を取られることになる。収入と支出のバランスを取るしか家計をやり繰りする方法はない。万が一貯蓄が無くなった場合、友人・知人から借りることは良くないことなので人格点が下がる。国から銀行を通して借りることができるようにすべきであろう。これには利子はつかない。
2.銀行:利子を利潤の基本としている銀行は成り立たなくなり、国家の金融部門の傘下組織として半官半民の形で個人・企業への貸付を無利子で行う業態になるだろう。人件費等の経費は国家が補填する。ただし、放漫経営は許されず、経済オンブズマンの絶えざる監視下に置かれる。銀行に保有資金(留保資産)は必要がなく、赤字に陥ったときは国が補填し、経営者が交替することになる。
3.企業:起業資金・運転資金などは、半官半民の銀行から無利子で借りることができる。この負債がある限り、企業としての組織格は低く見積もられる。営業がうまくいって黒字を出すようになれば、それを随時銀行に返済していく。保有資金は必要がなく、赤字になれば銀行から借り受けることができる。倒産に匹敵するほど経営が悪化した場合、その企業を国に差し押さえられるが個人としての返済は個人資産売却以上を迫られることはない。再出発はいつでも可能である。
4.国家:国家は連邦から現状の必要に応じた通貨UCを借り受けることができる。自国通貨を発行することはできない。その額の決定は連邦の裁定により、国家格・経済の状況から判断される。企業と同様、経営悪化に際しては、国家資産(インフラ)を連邦に売却する以上の責は問われないが、国家指導者と公務員の責任はその責任の重さに比例して格(組織格・人格)の下落を伴う。
5.連邦:連邦は世界経済の総量を科学的に算出し、それに見合う必要額を国際通貨としてデジタル的に創造する(基本的に発行量に制限はない)。長期的に経済を縮小する方向にもっていく(マイナス成長の促進)。これは経済規模を縮小することで地球温暖化を阻止するためである。通貨の裏付けはない(信用本位制)。連邦は各国にその必要に応じた通貨の配分を行う。その算定は、①国の人口規模・②生活レベル・③産業の大小・④国格、を基に算出される。
6.世界貿易:貿易は原則として禁止される。物流が許されるのは、①連邦管理下の世界の資源の再配分・②後進国の技術援助・③災害時の緊急物資援助、に限定される。人の往来(人流)も原則として禁止され、①地球規模の観測と研究のための研究者などの往来・②技術支援のための技術者らの往来、などに限られ、世界的な会議や交渉は全てテレビ会議で済ませる。これは反グローバリズムの動きと一致している。
7.世界経済:これまでの為替取引・株取引は無くなる。貴金属・希少金属・鉱物資源の取引も無くなる。これらは全て連邦の再配分により支給された範囲で生産活動が行われる。だが後進国への投資は残り、これについても無利子であるが、投資国の国格は上がる。金の現物通貨・取引だけは経済の揺らぎに対する緩衝材(補助)としてあっても良いかもしれない。もし混乱があるようなら廃止する。
以上の提案を「ノム経済」と仮称しておくが、これの良い点は、①各国の経済が安定する・②世界的経済破綻(恐慌)が起こらない・③経済不均衡が是正可能である・④単一通貨のため、為替が必要無くなり、為替取引という資本主義の利潤追求の仕組みが無くなる・⑤株というものを想定しなくても資金繰りが容易になり、株取引も無くなる、と云うような点にあるだろう。現在のところその欠点は見当たらない。
このことは資本主義を終焉させることができることを意味する。資本主義は、資金の貸与による利子・株の所有による配当利益・企業買収による利潤搾取、等を含んでおり、決して望ましい経済の在り方ではない。そして最大の悪は、労働による利益の搾取や過当競争による労働環境の悪化、そして競争主義による過大な資源の浪費ということをもたらすことにあり、それはひいては地球温暖化に繋がっている(11.22「人間史・世界史・要論」参照)。もしグレタ・トゥーンベリが要求するようなことを実現させるとしたら、このノム経済による方法しか他に方法はないであろう。