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【時事評論2024】

精神的健全性が社会行動に及ぼす影響

2024-05-06
  近年は愛国主義を掲げる中国やロシアなどの権威主義独裁国家が愛国的スローガンを声高に叫んでいる一方、西側諸国では社会的倫理を説くことが無くなった。それは司法において、倫理・道徳・常識・という言葉よりも社会通念・権利・少数者保護、といった言葉の方が頻繁に登場し、法に規定がないことについては、個人の自由が優先するかのように考えられているからであると思われる。全体主義を掲げる中国はそのようことはないので、国家秩序を優先し、法を守れ、社会に貢献しろ、と国民をせきたて、金縛りにしているようだが、そこから中国独自の倫理・道徳・常識といったものが生まれているのだろう。だが特に天安門事件を知る比較的中年世代に近い人や若い人が、自由を求めてアメリカを目指す人が多いとも言われ、中国人が必ずしも国家体制に満足しているわけでもないようだ(22.2.4「中国国民の満足度93%は本当か?」)。オーストラリアで最近、若年層による刃物による凶行が頻発しており、のどかなイメージの国にも大きな問題があることを知った。

  翻って日本ではどうかというと、太平楽な国民性であるせいか、国際情勢が緊迫してきているのに、自分たちの「戦争放棄」憲法を変えることさえできない。安定はしており、乞食もデモもほとんど見られないため、世界中から魅力ある異次元の世界を見ようと観光客が集まる。こうした世界の状況をみるにつけ、個人の精神的健全性に影響するものは何か、そしてそれが社会行動にどのように表れるかについて考えてみたくなった。

  日本が安全でデモもほとんどないほど安定していることが、日本人の精神的健全性を表しているかどうか、という議論については、ノムは懐疑的である。日本は自由な国だと思うが、日本人はある意味で自己規制型の国民性を持っており、「世間体を憚って自由な行動を自己抑制」している。これはある意味では非常に健全なことでもあるが、欧米的な自由の尺度からすると、自己抑制が強すぎると感じるだろう。日本的な礼儀作法は世界とは全く異なり、日本人はお互いに絶えず会釈を繰り返し、ペコペコしている。それは日本的流儀で言えば謙譲精神の発露なのであり、自然な動作なのであるが、外国人にはそうは見えない。だが外国人でさえその動きに吊られて会釈を始めるほどだ。

  日本に限らず、世界どこでも住民はお互いに助け合う風景は見られる。だがギリシャでは自分の家の前を掃除したゴミを隣の家の前に放り出すと観光ガイドが言ったことを思い出すが、そうした意地悪い根性は日本では見られない。そういう意味では日本人の精神的健全性はピカ一であると思われる。だが一方、世界的な情勢に対しての健全な反応に関しては鈍感であり、「平和ボケ」と称される一因となっている。いわば近視眼的視野しか持っていないと思われる。

  人間にとってどのような精神が健全と言えるのか、という問題については、結論を出すのは難しい。泥棒が跋扈する国家で家に鍵を掛けない人の精神が健全であるとは言えないだろうし、逆に泥棒がほとんどいなくなる未来世界では、家に鍵を掛けない人の精神の方が健全であるとも言えるだろう。ノムは10年前は自動車に鍵を掛ける習慣は無かった。幼少の頃は家に鍵を掛けるという習慣も少なかったようだ。家に帰ったとき、母親が居なくても家に入れた(今では「鍵っ子」という言葉がある)。もっと昔の田舎では、留守にしても家に鍵を掛けることは無かったと聞く。人を疑うことをしないというのは、高度な精神文明が生み出す産物だとノムは考える。世の中がそれほど安全なものになれば、人の意識も変わってくるだろう(21.10.12「精神文明の優越性」)

  未来世界では、物質文明が否定され、精神文明が華咲くようになっているだろう(21.3.15「物質文明から精神文明へ」)。そうした世界では、悪を働くことが決定的に不利な状況をもたらすことを誰もが知っている。逆に善なる行動がより大きな機会とより良い待遇をもたらすことを知っている。ゲーム理論からすれば、誰でもより有利な選択をするのが当然であり、それが行動に現れ、やがてそれは無意識的行動となる(22.11.6「勧善懲悪実現のためのゲーム理論の応用」)倫理や道徳を説かなくても、あるいは強制されなくても、人は自然と善なる行動を選択するようになり、それが慣習となり、常識となる。常識を破って悪を働けば、それはすぐに因果応報の原理から自分の損に跳ね返ってくる。人間全体がそうした行動を取るようになれば、世界的な精神的健全性が達成されたと言えるようになるだろう。そのためには、ゲーム理論的な手法としての「人格点制度」というものが、絶対的に必要になると確信している(20.8.30「未来世界における人格点制度」)

(3.23起案・5.6起筆・終筆・掲載)



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